- 2017-8-29
- 褥瘡(床ずれ)
尾てい骨は、仙骨部分より下の肛門近くにある骨です。下向きにとがっているため、しりもちをついたときに強く打っていたい思いをした経験がある人もいるでしょう。
この出っ張りがまさしく床ずれをおこすきっかけになるケースが多く、寝たきりの人は特に注意する必要があります。
〇尾てい骨周辺で起こる床ずれの特徴
突出している尾てい骨に、圧迫(体圧)が集中して皮下組織を壊し、床ずれを起こすのが始まりです。さらに、骨を起点としてずれ力が働きやすくなり、骨の上ではなく周辺に床ずれが移動するケースも多くなります。
〇ずれの働く方向と床ずれの発症
寝たきりの患者さんは、背部に体の重みが集中することによる褥瘡を回避するために、体位変換を行います。
この体位変換を行うときの移動や、車いすに移乗するときの動き方に問題がある場合があります。
仰臥位(あおむけ寝)のポジションから、いきなり体を起こすと、腰部分が折れ曲がり、尾てい骨や臀部に荷重が集中します。そのまま頭側拳上をキープすると、荷重から圧迫されたままの部位に床ずれを起こしやすくなるのです。
ジャッキアップ(頭側拳上)をするときは、いったん集中した荷重を取り除く「背抜き」をしてから、ずれ力が起こりにくい体位へ誘導しなければなりません。
●尾てい骨がずれやすい姿勢とは
仰臥位では突出した仙骨と臀部、肩甲骨の圧迫が強くなりますが、ジャッキアップ時は尾てい骨周辺のずれ力に慎重な配慮を要します。
体を起こした状態の場合、左右どちらかに少しずつ傾いてしまうことがあります。体幹をしっかりと保ち、細かなずれが起こりにくい姿勢保持をするようにします。
半臥位(横向け寝)の姿勢をとりつつ、ムリに引き上げたり、両肩から全身を持ち上げようとしないようにしましょう。
〇床ずれが尾てい骨に発生したら
骨の真上で床ずれが起こると、その周辺に褥瘡は広がって創傷部が大きくなりやすいという特徴があります。ベッドに座った姿勢(頭側拳上)から少しずつ滑りが起こると、骨盤が下向きに寝るような動きをとり、尾てい骨から臀部、背中にかけて上向きに引っ張られるようなずれ力が働きます。
上向きのずれが起こる範囲が床ずれになり、尾てい骨の周辺で広範囲に発症しやすくなるのです。
床ずれは骨の突出部で起こりやすいですが、尾てい骨周辺で褥瘡を発症すると、臀部にまで広がりやすく、加齢によって皮膚のたるみがあればさらに増幅します。
一度発生すると、完治までに時間がかかりやすい部位なので、早期に発見して十分な体位変換とケアを心がけましょう。