- 2016-9-14
- 褥瘡(床ずれ)
かつて褥瘡は、単なる床ずれとして、同じ姿勢を保持せざるを得ない入院患者や車いす生活を送る人にとって「やむを得ない症状」と考えられていました。しかし、現在ではこの褥瘡が起こる原因は非常に複雑で、さまざまな要因が絡み合って生じることから、予防可能な症状としてトータルケアをするべき疾患であるという考え方にシフトしています。
○局所的原因
褥瘡は、局所的原因としてとらえると、皮膚に圧力がかかることによる虚血性疾患になります。
●圧力による虚血
同じ姿勢のまま一定時間を過ごすと、皮膚は体重と重力により圧力がかかります。特に骨突起部分(肘やかかと、仙骨部、後頭部)は皮下脂肪と筋肉が少なく、加重がかかると骨が直接的に真皮や表皮を押し付けるような状態となります。骨が突出している部分は特に皮膚が虚血し、皮膚細胞が壊死してしまうため褥瘡を引き起こしやすくなります。
●加齢による皮膚変化
寝たきりや車いすの姿勢を強いられる患者の中でも、高齢者には特に注意が必要です。高齢者は肌の水分量が減少し、潤いとはりが不足します。皮膚が硬く乾燥した状態になると、摩擦や圧力によって表皮が損傷しやすくなります。また、運動機能が失われると、全身の血流が悪くなり、さらに圧力が加わる部分の局所血流が低下することで、皮膚細胞自体の新生・増殖機能も低下します。よって創傷箇所の治癒を送らせてしまうことに繋がるのです。また、乾燥した皮膚が損傷することで、細菌やカビ(真菌)感染症などの炎症性皮膚疾患がおこりやすくなります。虚血性疾患としてだけではなく、皮膚細菌感染にも注意が必要です。
○全身的原因
褥瘡患者は痩せている人の割合が高くなります。また、マヒがある患者に多いのが、運動量の低下による筋力低下。そして健常と同等の栄養を摂取することができないために起こる「やせ」です。痩せた身体は、脂肪や筋肉が極端に減少します。そのため、骨突起部以外の場所においても、骨と皮膚が擦れやすくなり、負荷がかかりやすい状態を作ってしまいます。
●低栄養状態
痩せている対象者は、たんぱく質・エネルギー低栄養状態になり、筋肉にたん白異化亢進が進むことで筋委縮が生じ、骨突出を更に助長してしまいます。皮下脂肪が少なく、骨が突出するため、局所的原因となる虚血に繋がります。低アルブミン血症や低ヘモグロビン血症は、浮腫や皮膚組織耐久性を低下させ褥瘡発生や予後に大きく関わってきます。
●血圧低下
栄養が低下し、また自立運動が難しいことで血圧が下がり、抹消血流量が減少します。よって、充分な血流が支持組織へ届かず、皮膚が健康で健全な状態を保てないため虚血性疾患を引き起こしやすくなります。