- 2017-5-16
- 褥瘡(床ずれ)
床ずれがおこったら、まず患部となった圧迫箇所の除圧やずれ力などの外的要因に注目して、床ずれの原因を取り除くことが第一です。しかし、水疱や発赤などから徐々に皮下組織が炎症を起こし、床ずれの傷が深くなってしまうことがあります。
皮膚の表面は、体を外の刺激や感染から守るためのバリア機能として、とても大きな役割を果たします。このバリアが欠損してしまった床ずれの状態は、傷口の感染はもちろんですが、細菌が外傷部から体内に侵入して感染症を起こすリスクもはらんでいます。
感染症をお越さないために、また患部を細菌から守り治癒を促すために、有効な治療方法だといわれているのが「ラップ療法」です。
○床ずれの治療にあのラップを使うのか?
傷を治すために使う消耗用品として想像するのは、包帯やガーゼ、医療用固定テープなどでしょう。皮膚の表面から傷が汚れないために、また薬を塗布した後の処置としてこれらの用品が使われますが、なぜあのラップを使うことになったのでしょうか。
●使い捨てラップの密着と治療
床ずれ治療にもっとも重要なのは「湿潤環境の維持」といえます。
ガーゼや脱脂綿、包帯では傷をカバーできても湿潤状態を維持することができず、患部が乾燥してしまい、皮膚の深い部分がしっかりと再生したか確認がしづらいのが問題でした。また、深部の褥瘡が感染している場合、深い部分で進行する感染症に気づかないまま重症化するという危険もあります。
そこで、皮膚表面の創傷部分にぴったりと密着して感染菌が進入しづらく、しかも乾燥して用品に張り付く心配がない素材として、1990年代後半から急速に広まったのがこのラップ療法です。
●ラップ治療のメリットは
日用品としても、様々な使い方があるラップは、手軽に調達することができ、しかも価格が安いというのが最大のメリットでした。この手軽さが受けて、専門用品ほど治療代に負担がかからないラップ療法は当初、うわさを聞いた患者へ急速に広まりました。
床ずれといえば、治療で難しいのが患部と用品の密着です。患部の滲出液をガーゼが吸収してしまえば、患部表面は乾いて被覆材にくっついてしまいます。ラップを使えば患部は乾燥せず、ラップと創傷がくっつく心配もありません。
○床ずれにラップを用いた治療の課題
用品として優れたポイントが多いラップですが、本来の用途ではない使い方に難色を示す専門家もおり、賛否両論ありました。また、創の状態によっては滲出液が過多の場合にコントロールすることが難しいケースもあるということに注視されてきました。
現在は、このラップ療法の発想をもとにして、実際に医療用品が開発されています。しかし、医療用にかいはつされたとしても、床ずれ治療に大切なのは、適時創の状態を確認してそれにあう治療法をおこなうことでしょう。