敗血症性ショックを引き起こす感染と余命・予後

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健康な状態でも、感染症にかかるリスクは常にはらんでいます。成人は体の免疫能力も高く、自浄作用に期待が持てるため、体内に侵入しても多少の感染源が体に影響を及ぼそうと、全体に影響を及ぼすことは少なく、感染箇所付近の局所でとどまらせることも可能です。しかし、免疫力が低下した高齢者や、持病・疾患のある人は、わずかな感染が原因で余命を短くしてしまう危険があります。
健康に近づけるための医療処置が原因となって、余命を短縮させてしまうこともあるため、感染症の恐ろしさはしっかりと理解しておく必要がありそうです。


○敗血症とは
局所で感染した細菌が全身に回り、多臓器にまで健康被害をもたらす危険な臓器障害のことを言います。感染源が特定できればその感染症に対しての投薬を行い、早急に対処をすることで快方に向かわせることはできますが、処置の初動がおそかった場合や、全身の感染に対する制御が不能となり、投薬の効果かが期待できなくなってしまった場合は、その根治は非常に厳しくなります。
世界中で年間2700人もの人が、この敗血症を引き起こし命の危険と直面しています。そのうち3割の人が命を落とし、重篤な状態になった人の多くは、がんや白血病などの臓器や血液にかかわる病気を患っている人が多いという報告もあります。

 
○効果的治療法が確立していない敗血症
これまでは、敗血症にまつわる治療・処置の完全マニュアルは医療現場でも確立しておらず、通例の感染症への対処と同様に処置、投薬を行いながら経過を見守るという方法で、発症した患者の対処を迫られていました。
処置は早ければ早いほうがいいということは認知されていますが、その原因となる感染細菌が何か、特定(または想定)をしてからでないと、効果的な抗菌剤を処方することができないという時間とのせめぎ合いによって、余命・予後が大きく変わってくることが、この敗血症の難点でしょう。
重篤な状況が続けば、敗血症性ショックを起こし、生命維持ができず余命を短くするリスクが高まります。

 
○新薬への期待と敗血症の治療
これまでは、特効薬がないといわれていた敗血症ですが、最近になって脳内物質のオレキシンに敗血症治療の可能性を見出す研究成果があったことを、筑波大学の柳沢正史教授をはじめとする研究チームが発表しました。
この物質は、「脳内で免疫や体温調節にかかわる中枢神経の働きを活発化させることで、全身の炎症物質の濃度が下がり、体温や血圧の低下といったショック症状の改善につながったとみている。
としています。
敗血症が余命を短くするものではなくなるかもしれない可能性と、治療法の確立にも期待がもてる、この研究の今後にも注目していきたいですね。

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